大判例

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横浜地方裁判所 昭和26年(行)1号 判決

原告 尾和瀬保太郎

被告 神奈川税務署長

一、主  文

原告の訴を却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二、事  実

原告訴訟代理人は「被告が昭和二十五年九月十一日別紙目録記載の不動産についてなした滞納処分はこれを取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、その請求原因を次のとおり述べた。

(一)  被告は昭和二十五年九月十一日原告に対し昭和二十四年度の所得税の滞納ありとしてこれが徴収のため、原告所有の別紙目録記載の家屋につき差押処分をなした。

(二)  右差押の基本となつた税額は次のとおりである。

(1)  昭和二十四年仮更正決定による随時分五、八一三円、同加算税額三〇五円

計六、一一五円

(2)  昭和二十四年確定更正決定による随時分一、三〇六三円

同加算税額 三、五五〇円

(三)  然し乍ら原告の昭和二十四年度の所得税は次のとおりで原告は法定期間内に左のとおり予定申告をなし、これに基いて一、二期分の納税をした。

所得金額    八七、七四〇円

算出税額    一八、八七五円

扶養控除     一、八〇〇円

差引税額    一七、〇七五円

第一期納税額   五、六九三円

第二期同     五、六九一円

第三期同     五、六九一円

而して左のとおり確定申告をした。

所得金額    五四、一〇〇円

算出税額     七、五〇〇円

右算出税額より控除すべき金額

1  扶養控除   一、八〇〇円

2  源泉徴収額    二四〇円

差引税額   五、四六〇円

従つて原告は昭和二十四年度の所得税は五、九二四円過納したことになる。

(四)  被告のなした前記確定更正決定は根拠のない不当のものである。

原告は昭和二十五年三月四日頃その送達をうけたので法定期間内である同月中旬、口頭を以て異議を述べ審査の請求をなした。

右審査の請求についてはまだ決定はない。

然るに被告は前述の如く滞納処分をなしたもので右滞納処分は違法であるから原告は法定期間内である昭和二十五年九月十五日頃被告に対し口頭を以て異議を述べたがその取消がないので本訴においてその取消を求める。

被告の答弁

被告指定代理人は次のとおり述べた。

(一)  本案前の答弁として主文第一項同旨の判決を求め、その理由を次のように述べた。

「国税の滞納処分に関し、異議ある者は、その処分のあつた日から二ケ月以内に不服の事由を具して処分をした税務署長を経由し納税地の所轄国税局長に審査の請求をなし(国税徴収法第三十一条の二)審査の決定に対し不服がある場合に始めて訴訟を提起することができるのである。(国税徴収法第三十一条の四、行政事件訴訟特例法第二条)然るに原告は右審査の請求をしないで直に本訴を提起したのであるから本訴は不適法として却下さるべきである。」

(二)  本案の答弁として原告の請求を棄却するとの判決を求め、次のように述べた。

(1)  被告が原告の昭和二十四年度の所得税につき、別紙目録記載の家屋に対し滞納処分をなしたこと、原告が所得税法所定の期間内に被告に対して、原告の昭和二十四年度所得税につき、その主張のとおり予定並に確定申告をなしたこと及び原告がその予定申告に基きその主張のとおり税額を納めたこと(但し法定期間経過後納付した)はこれを認める。

(2)  被告は原告のなした予定申告を過少と認める昭和二十四年十一月三十日附書面を以て原告の昭和二十四年度所得金額を一二〇、〇〇〇円年税額を二八、七〇〇円と更正した。右更正による第一、二期納税額は合計一七、一九七円となりこれと原告の第一、二期納入額合計一一、三八四円との差額五、八一三円は原告の租税債務であり又これに対する加算税額は三〇〇円である。

(3)  被告は原告のなした同年度所得確定申告を過少と認め昭和二十五年二月二十八日附書面を以て、原告の右所得を一二四、六〇〇円年税額を三〇、二六〇円と更正決定した。右年税額と(2)の更正による第一、第二期分納税額の合計額一七、一九七円との差額一三、〇六三円が右更正決定により確定された原告の租税債務であり、これに対する追徴税は三、二五〇円加算税三〇〇円である。

(4)  被告は原告に対する右(2)(3)の租税債権に基き原告に対し滞納処分をなしたものであるから右滞納処分は違法の点なく原告の請求は失当である。

三、理  由

よつて先づ本訴の適否について判断する。

税務署長のなした国税徴収法による滞納処分に不服ある者は当該処分をなした税務署長に対し、右処分の通知を受けた日から一ケ月以内に不服の事由を記載した書面を以て再調査の請求をなし、再調査の結果に基く決定に対し不服ある場合若しくは、再調査の請求後三ケ月を経過した場合に限り訴を以て滞納処分の取消を求めうることは国税徴収法第三一条ノ二(昭和二十五年四月一日施行)行政事件訴訟特例法第二条に徴し明白である。然るに原告の主張するところによれば原告は本件滞納処分に対しては法定期間内である昭和二十五年九月十五日頃被告に対し口頭を以て異議を述べたというにとゞまるから原告は右滞納処分について被告に対し法定期間内に国税徴収法所定の再調査の請求をしなかつたものというの外なく、原告が右手続を経ることなく直ちに本訴を提起することを正当と認むべき事跡も亦存在しないから原告の本訴は訴訟要件を欠き、その欠缺は補正し難いものといはねばならない。

よつて本訴は不適法として却下すべく訴訟費用は敗訴の原告の負担とし主文のとおり判決する。

(裁判官 山本信政 地京武人 樋渡源荘)

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